まちづくりや観光客誘致に関連して、『もてなし』という言葉がよくいわれる。これは、簡潔にいうと来訪者を受け入れるときの「迎え方」といえるのではないでしょうか。
地方を旅していて、「佐倉から来ました」というと、「良い所に住んでいますね」といわれたり、たまたま立ち寄った店での接客態度や、途中で道を聞いた時の住民との触れ合いが、楽しい思い出として心に刻まれ、そのようなまちは再度訪れてみようという気持ちになります。
訪れた土地での暖かい触れ合い、心にこもったちょっとしたサービス、行き届いた配慮、そうしたものは時として立派な観光施設や町並みを見るより深い感動としていつまでも残ります。
初めて訪れる土地でトイレを探すのに苦労した経験は、大抵の人が持っている事でしょう。ある町では、商店や喫茶店が「市民トイレ」を指定して観光客に進んで提供しています。
「訪問の目的を達成した」・「堪能した」としても、「再び訪れたい」・「他人にも勧めたい」という、一歩も二歩も次元の高い満足感を来訪者に持ってもらう迎え方が、観光に取り組む所には求められ、そのような取り組みに力を入れている観光地も沢山あります。 高齢者や障害者に対して、「何かお手伝いしましょうか」と、一声かける事が如何に来訪者の心を和ませるか、旅をしていてそのような情景に接したとき、ほほえましくもあり心が豊かになった気分になります。
「困っている人に手を貸す」、「道を教えてあげる」、「写真を撮ってあげる」のような事は、時間も金もかからない、ただ一寸した親切心、いわゆるもてなしの心があれば誰にでも、何時でもできる事です。
来訪者を迎える「もてなし」にマニュアルはないといわれています。来訪者に接する一人ひとりが、その場の状況に応じた判断を任されている事になります。そして、訪れる観光客への気配りと思いやりを全市民が持って接する事が大切で、一部の人たちが行うだけでは効果は期待できません。
勿論、観光客を受け入れていくためには、駐車場の整備や道路の案内標識、各施設の案内板、また、街中のトイレの問題や食事処・土産店など、ある程度のハード部分の整備は必要です。しかし、それだけでは観光客は満足しない事を心得て対処していかなければなりません。幸い佐倉には、観光地としての魅力になりうる資源が備わっており、こうした資源を創造的に活かす工夫と同時に、
といった高い次元のもてなし文化が根付けば、来訪者は佐倉のまちに感動し、市民にとっても『住んで良かったまち、住みたいまち』につながります。
≪2010年11月 記≫